世界各国の原発事情 (「日本経済新聞6月15日〜24日より) |
|
|
■米国・原発推進は州により様々 : |
オバマ大統領は推進を表明・・・・・ |
オバマ大統領は福島原発事故6日後、原発維持の方針を表明した ・ 全米31州には104基の原発があるが、州によって維持の方針様々 ・ バーモント州では福島と同じ型の原子炉を使っているが、州政府はこの原発の運転延長を拒否している ・ 地震の多いカリフォルニア州でも運転許可を延期している |
原発反対派も増加している・・ |
米国の世論調査では原発推進派は33%、反対派は64%となっている |
シェールガスが安価に・・・・・・・・ |
原発の魅力は運転コストの安さであるが、米国では堆積岩に溜まる「シェールガス」の生産が技術革新で急増している ・ 3年前10ドルガス価格は4ドルまでに下落し、原発の魅力が薄れつつある ・ ただシェールガス採掘では環境問題もしてきされており、万能とはいえない ・ 原発の安全性とガス・原発のコスト競争が模索されている現状になっている |
|
|
■中国・脱石炭で原発推進 : |
中央政府は原発推進・・・・・・・・ |
稼働中の原発は13基、建設工事が進む原発は28基 ・ 2015年には2010年比4倍の7000万〜8600万キロワットに拡大する計画 ・ ただ福島原発の事故をうけ、内陸部の原発については計画を見直す可能性もでてきた ・ とはいえ脱原発に向かうわけではない ・ 副首相は原発建設地へ行って原発推進を鼓舞している |
背景は石炭へ過度依存・ |
現在の中国の発電の比率は7割が火力でその大半が石炭、原発は1%しかない ・ 石炭に頼るあまり、石炭の価格が上がると発電会社は赤字になるので、電力料金をあげようと発電稼働率をとめる ・ 電力不足になるなどを起こしている ・ 石炭輸送効率の悪さも問題になっている ・ 出炭地北部と発電所沿岸部が遠く列車輸送コストもかかりまた過密状態 |
政府は太陽光発電も加担・・・・ |
政府は太陽光発電を2015年に1000万キロワットにする方針を打ち出した ・ 風力発電も2020年には2010年比5倍の1憶5千万キロワットにする青写真を出している ・ 風力発電、太陽光発電にはスマートグリッド制御が必要であるが、中国の広大で人口の多い国で個人個人の電力管理をすることは極めて難しいと思われる |
政府は原発推進しかなしと・・ |
脱石炭をかかげ新エネルギーを模索する中国であるが、政府系シンクタンクの産業経済研究部長などは「中国は原発の発展が不可欠だ」と言い切っている |
|
|
■東南アジア・安全めぐり計画足踏み : |
2020年までに各国建設予定・・・ |
タイの世論調査でも7割が原発反対、2大政党とも建設反対 ・ フィリピン1基完成、稼働見合わせ ・ 、インドネシアでも建設にまったがかかっている ・ ベトナムは4基(日ロヘ2基づつ発注)予定 |
成長著しい東南アジア電力逼迫・ |
電力需要が各国4%の伸びで、20年足らずで今の2倍が必要になる ・ 8割を化石燃料でしているものの原油高等でのコスト高が問題で、原発安全問題浮上で難解となった |
|
|
■フランス・国益確保へ推進堅持 : |
威信をかけてEPRを建設・・・・・・・ |
2014年稼働を目指しノルマンディにEPR(欧州加圧水型原子炉)を建設している ・ これはフランスが威信をかけて建設している最新型炉で、安全性が高いとされている ・ 福島原発事故3日後にサルコジ大統領は「脱原発など論外だ」と原発推進演説をした ・ 2大政党も国民世論も原発推進で国民的議論にもならない |
緩すぎず厳しすぎずでしたたか・・ |
規制が緩すぎればロシアの安価な原発に負ける、厳しすぎれば東南アジアなどこれからの市場に売り込めない ・ とのことでEPRにあわせての国際規制づくりを進めようとしている ・ 独立を好み独自中心思想がつよいのがフランス人 |
|
|
■ドイツ・全廃は英断か過信か : |
脱原発への政府のシナリオ・・・・・ |
脱原発の関連法案は7000ページにも及ぶ ・ 15年から全17基を順次止め、現在電力供給の17%の自然エネルギーの比率を35%にし、エネルギー消費も10年間で10%削減しようとのもの |
電力料金3割上がっても・・・・ |
家屋などの省エネ工事の金融支援枠を5割増加 ・ 風力発電など工事は進むが、全エネルギー転換の工程表はまだない ・ 脱原発で電力利用金は3割あがるとみられている |
近隣諸国は波及を警戒・・・・・・・・ |
電力を融通しあう近隣諸国の警戒もつよい ・ エネルギーのロシア依存を下げ、石炭火力を減らしたい東欧諸国はドイツの動きを警戒している ・ 筋道をたてないと納得しないのがドイツ人 ・ われわれはできるとの信念が先行する |
・・・・・・ |
|
■中東・人口急増を支える柱に : |
中東各国原発導入推進・・・・・・・・ |
トルコでは原発推進が3か所で進んでいる ・ 野党が原発反対姿勢を見せたが、原発推進の与党が勝利した ・ 原発反対の声があがったのは中東では異例中の異例 ・ アラブ首長国連邦(UAE)では4基の原発を韓国に発注、世論調査も85%が導入に賛成 |
産油国中東も原発は喫緊の課題・ |
サウジ、エジプト、ヨルダンなど人口が年率2〜3%増加している ・ 電力も2020年には2倍必要になり、石油だけではまかないきれない ・ 石油は外貨獲得に使うべく原子力開発を急ぎたいとしている ・ イスラム原理主義者のテロの脅威が心配のところ ・ ジレンマは続く |
|
|
■ロシア・安全性アピール、輸出推進 : |
ロシアの原発輸入予定国・・・・・・・ |
インド12基、トルコ4基、ブルガリア2基、中国2基、ウクライナ2基、ベラルーシ2基、ベトナム2基、イラン1基 ・ 2025年までに世界で30基建設、世界シェアの20%に目標をおいている ・ 日本、欧州の原発よりも5割〜3割安いのが売り物 ・ ウランの生産から一貫輸出も強味としている |
大統領、首相とも原発推進宣言・・ |
メドベージェフ大統領「ドイツの脱原発政策は極端すぎる」と釘をさし「人類が近い将来に原発を止めることはあり得ない」と宣言 ・ プーチン首相も福島事故後の3月15日にベラルーシ原発に4800億円投資を宣言 |
国民は警戒感が根強い・・・・・・・・ |
チェルノブイリの経験から国民には原発への警戒感が根強い ・ ロシアは原発輸出国に対し高官を派遣し原発の安全性をアピールするのに躍起 ・ 制御システムなど最新技術の導入の期待もあって、原子力協定各国とりつけ発効を目指している |
・・ |
|
・・・ |
|
・・ |
|
|
|
|
|
太陽を利用しよう (森永晴彦著「原子力を眠らせ、太陽を呼び戻せ」草思社刊より) |
|
|
■原子力利用の限界 : |
|
放射能教育の誤ったアプローチ・ |
生活者は放射能についてよく教えてもらうこと、そしてそばには正しく放射線測定のできるものがあれば安心なのだが、ほとんどそれがなされていない ・ 比較的微量の放射能であるアイソトープが多く医療用に使われるが、アイソトープやX線を扱う医師は測定器や血液検査などでコントロールされ、安心できている ・ 本著書の筆者は原子力関連の仕事をドイツの大学、東京大学でしてきたが、自分のところにいつも放射線測定器があったので怖れはなかっというた ・ ところが原子力関係者は「備えなければ憂いなし」の考えがあり、生活者へ測定具すら配布せず、「怖いから教えない」の方針をみな守っているようだ |
核融合計画の重要な誤り・・・・・・・ |
ノーベル賞の物理部門の受賞者の半分近くは原子力関係である ・ 原子力関連、核物理の本命は核融合であるとされてきている ・ 普通核エネルギーの利用はウラン、プルトニウムなどの核分裂エネルギーである ・ この重たい元素の分裂反応に対して、軽い元素H(水素)の融合でHe(ヘリウム)のできる反応、これは太陽の燃焼、恒星の輝きなど 無限エネルギーに近い核融合である |
水素爆弾が核融合反応・・・・ |
ビキニ環礁で実験された水素爆弾、太陽の中心のHよりもはるかに反応しやすい重水素を原爆のエネルギーによって超高温に核反応に誘導するものだが、これを実用エネルギー源として開発しようとしたものが「核融合」である ・ 核融合の燃料:重水は普通の水の5000分の1ほどに含まれていて、水の電気分解で生成される ・ 重水を水から分離するには極めて多量のエネルギーが必要となり、これがネックになっている ・ また反応の過程でトリチウムという物質が生成されるがこれが放射性物質で問題ありである |
核融合炉は実現するのか・・・ |
太陽を地球上に出現させるということは、重水素ガスを1億度の高温に加熱することを意味する ・ こんな高温に耐える容器がない ・ プラズマ処理によるソ連のトカマク装置が有望視されているが、実用段階にはいまだ至っていない ・ あきらめるべきプロジェクトである |
|
|
■エネルギーの長期計画 : |
原子力に代わり太陽光の追究を・ |
太陽光エネルギーの利用は様々なメリットをもっている ・ 太陽電池の大量生産が可能になれば大幅にコストを下げられ、採算のあうものにできよう ・ 太陽電池は自己増殖性があり、シリコンとアルミニウムの製造に多量の電気を使いコスト高であるが、自前の電気で安くできれば、益々増やすことができていく |
ポスト原子力時代の設計を・・・・・・ |
原子力の技術はわれわれのすべき限界を超え、われわれ自身を全滅させうる可能性をもってしまった ・ 日本の科学技術庁はその大部分の予算を原子力につぎ込んできた ・ 科学技術庁の隠し事も多い ・ 直ちに廃止されたい庁である ・ 低俗な管理者たちの横行で低められてしまった原子力は、荒治療をしないと直らない ・ ポスト原子力時代の設計は科学技術者の自主的な徹底的な現状批判から始まらなければならない ・ そのためには原子力を歴史的に研究するにとどめておくべきと考える |
|
|
|
|
|
|
■・・・・・・・・ |
|
・・・・・ |
|
・・・・・・・・・・・・・・ |
|